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4月23日 標本を瓦割り 標本をサポータージャケットから外して、発泡スチロールの板の上にのせ、作業をはじめる。ジャケットはこの日記念に持ち帰った。 今日も基本的には割れ目にエポキシをつめこんでいく作業なのだけれど、前日の手抜きがここで大失敗となって出てしまった。前にも書いたように狭い割れ目にエポキシをつめこんでいくのはとても微妙な作業だ。狭い割れ目になってくるとピンでひっかいて土をほじくり出すこともままならないし、奥までエポキシをおしこもうと思ってもうまくいかない。もともと僕はそれほど器用な方でもないから、こういうのはとても苦手である。でもそういうのって言い訳にならない。プロのテクニシャンがおそろしく狭い隙間にも絶妙にエポキシをつめこんでいくのだ。僕にだってやってできないことはないというか、少なくとも手を抜かずにやることはできるのである。というわけで(どういうわけだ)前日にエポキシをつめこんだ標本の中心近くを走る割れ目が元凶となる。 新しい割れ目にエポキシをつめこもうと思って、よっこらしょと標本の向きを変えると、突然ぼこっという音がして標本を持ち上げた両手が軽くなった。真ん中の割れ目の接着が外れて、標本がきれいにまっぷたつになってしまったのだ。これには僕も青くなった。断面を見ると、エポキシ樹脂は表面近くの浅い部分を接着していたにすぎない。これでは外れるわけである。 しかられることを覚悟しながらおそるおそるレーナさんに見せると、「うん、見事に外れちゃったねえ。でもまたくっつけるから、ちょっと待ってて。まず断面のエポキシ樹脂と土を全部おとしなさい。そのあとで接着剤を用意するから」と意外にあっさりしたもの。 どうしてだろうと考えてみたのだけれど、理由は3つ考えられる。 1.割れ目の接着が外れただけで標本自体に損傷はないこと。 2.もともと割れ目があちこちに走っていて壊れやすいこと(つまり、今回の破損は十分に予想されることだった)。 3.まっぷたつになってしまったおかげで、割れ目にはさまっていてとりのぞけなかった土や草の根を落とせること。 つまり、接着が外れないよりは外れた方がよかったのだ、結果的に。 接着が外れていなければ僕のつめこんだ浅いエポキシは後になって別のところでギブアップしてしまっていたかもしれないけれど、接着が外れたおかげで僕は邪魔な土や根をとりのぞき、もっときちんとエポキシで接着しなおすことができるのである。 レーナが作った接着剤は2種類の薬品の混合物らしくて、「クレイジー・グルー」とはまたちょっと違う。効き目が強烈なかわり、ひどいにおいがする。汚い話で申し訳ないけれど、築40年ぐらいたっている掃除されていない学校の校舎のトイレを濃縮したようなにおいだ。これを接着面にくっつけて、あとは5分間ぐらいじっと手で押さえる。ぶれるとだいなしになってしまうので気合いをいれてがんばった。 この接着剤が乾いたらあとはまたエポキシをつめなおしていけばいい。もちろん今度はもっとていねいに注意深く、手を抜かずにつめていく。結果的にはあそこで接着が外れてくれてよかったのだろうけど、でももちろん結果オーライというわけではない。手を抜かないこと、集中力を切らさないこと、それが大事だ。
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